手紙は時を駆け抜けて
私は胸の奥がキュンとするのを感じると同時に、フェンスにくっついて彼に見惚れていた。
みんなを見渡すために一瞬でも横顔が見えれば、私の単純な心臓は大きく跳ねた。
屈託なく笑っていっぱい見えた白い歯と、額に光る汗。
そして、まっ赤な夕日にも負けずに輝く、澄み切った黒の瞳。
どうしたら、あの瞳に心奪われずにいられただろう……。
ガラス玉みたいにきれいで繊細そうなくせに、その深い黒の向こうに熱いなにかを感じたんだ。
目が見えたのなんて一瞬だけ。
彼の視線はすぐに、彼を慕って集合したチームメイトに注がれていた。
それでも私はユニホーム姿の大きな背中から視線を外せなかった。