手紙は時を駆け抜けて


フェンスの網目に絡めた指につい力がこもったら、指に食い込んで痛かった。

ちょっと目頭が熱くなったけれど、隣に佇む康太と詩織の話声が聞こえて、思わず空に目を向けた。

野球部の中心の樹と、さえない私。

私はフェンスから指をはなした。

向こう側がこんなにも見通せるのに、触れることのできないこの壁は、私たちの仲をそのまま表しているみたいで、笑えた。

やがて、チームメイトの去ったグラウンドに足を踏み入れた私だったけれど、私ひとり彼のそばまで歩み寄ることはできなかった。

人の影が去りきったグラウンドの隅。

ベンチに腰掛けるひとつの伸びた人影。

夢もなくなんとなく生きてきた私は、その影に爪先を触れさせることさえ躊躇した。


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