手紙は時を駆け抜けて
手紙を持っている手が、衝動的にぎゅっと握りつぶそうとして閉じかけた。
けれど、心が指を止めた。
私は手紙を持ったまま、力尽きてベッドに寝転ぶ。
濡れて重い前髪が目に覆いかぶさったけれど、どかす元気もなくて、大人しく瞼の暗幕を下ろす。
私はこうやって、諦めてばかりきたんだ。
未練がましく今も持っている手紙も、幼馴染という地位に甘んじていた自分も。
間抜けな私は、ぽろぽろと大事なものを零し続けてきた。
挙句の果てには、大好きな人まで零してなくなってしまったのだから……。
忘れたくても忘れられない。
県大会決勝戦の会場に駆け付けようとしていた朝の、詩織からの電話。
今にも壊れてしまいそうな危うい声で、悪夢を味わった。