手紙は時を駆け抜けて
既に目線が同じになった赤い太陽に、険しく目を細める。
もうすぐ、後夜祭が始まる……。
私は目を伏せ、ポケットへ乱暴に手を突っ込んだ。
しんとした廊下に、ぐしゃりと、紙の乾ききった悲鳴が響く。
今更、死んだ人からの手紙に、過去の夢の続きを見てどうするんだ……。
私は手紙と隣り合う手を震えるほど強く握りしめる。
弱い心が決して惑わないように、言い聞かせる。
手紙など関係ない……。
自分の気持ちを隠していく、私はそう決めた人間だ。
今になって、樹を想う資格なんて、どこにもない。
そっと脚立から降りると、足をしっかりと床につけた。
今ならまだ、後夜祭が始まる前に学校を出られる。
刻々と沈む夕日を横目に、私は床を蹴り出した。