手紙は時を駆け抜けて


私を見ていた……?

ロッカーに手紙を入れたのは……?

私の足は気づけば床を思い切り蹴りだしていた。

考える暇なんてない。

私は走る。

床に横たわる看板も旗も次々に踏みつける。

足首がぐらつく。

でも足は止まらない。

手に握りしめた手紙が、私を突き動かすんだ。

あの人影のあった階段への曲がり角に手をかけて、身を乗り出した。

階段の下の方に、焦って駆けおりる黒い頭がちらつく。

私は無我夢中で駆けおりる。

手紙なんて関係ない、そんなの大ウソだ。

どんなに心を誤魔化しても、樹の欠片ひとつで、私の心なんか簡単に弱虫になる。

この手紙の差出人が本当に樹だったらいいなって、お花畑な頭をしている。


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