手紙は時を駆け抜けて
もう一度樹に会いたいって、本気で願っている。
もしまた樹に近づけるなら、その可能性に手を伸ばさずにいられるもんか……。
手すりを飛び越えんばかりに踊り場を回った私。
階段の先の、オレンジに色づいた廊下に、揺れまどうスカートのシルエットが浮かんでいる。
あの子が、樹のなにかを知っている……。
駆けだす心に、体が前へ出る。
「待って!」
もつれた足で駆けだす女子。
私は引き千切れんばかりに腕を伸ばし、逃がすまいと彼女の手首に強く指をからめた。
そしてぐいとその腕を引き寄せながら、我慢できずに言い放つ。
「手紙の犯人はあなたなの!?」
茜色に焼けた視界の中で、しなやかな女の子の体が翻る。
長い黒髪が宙に舞って輝く。