手紙は時を駆け抜けて
やがて黙って歩きだした康太について、私たちは目の前の空き教室に入っていた。
静まり返った薄暗い教室の片隅。
後方にまとめて押しやられた机のひとつに、康太は大きな手をついて、私を睨み上げた。
「今になって何の話だ? 詩織にしたことと、どう関係がある?」
私は手に握っていた手紙を、机の上に押し広げた。
もう一通の手紙もポケットから出して差しだす。
「私のところに、樹からの手紙が来た」
「はぁ!? お前なぁ……」
早速降り注ぐ怒鳴り声をはねのけ、私は手紙に並ぶ文字を強く指差し、声を張り上げる。
「よく見てよ! 私たちなら樹だってわか……」
康太の拳が机にふりおろされた。