手紙は時を駆け抜けて
思わず身を縮めた私の前で、あのお調子者の肩がどうしようもなく震えている。
なのに康太は、必死に歯をむき出しにして怒りをぶちまける。
「悪ふざけはよせよ! 今まで俺ら、樹のこと口に出さないようにしてきたよな。なのに傷えぐるようなこと、よく平気で出来るよな! アイツは死んだん……」
「ふざけてなんかない! なんにもふざけてなんかない」
康太の言葉の刃に涙が静かに流れだそうとした時だった。
悲鳴にも似た叫びが耳に飛び込んできたと同時に、私は目を見開いた。
曖昧に青みがかってきた窓の外を背に、その身を絞るようにして今にも崩れかけている、か弱い女の子の姿があった。
血相を変えて駆け寄ろうとする康太。
しかしその瞬間、薄闇にふたつの眼が鋭利に煌めいた。