手紙は時を駆け抜けて
手のうちにおさまりきらない叫び声が、辺りにまき散る。
まるで、心にたまりにたまった棘が、堰を切って溢れ出ていくように。
私にも棘が流れ込んで、胸を容赦なく刺していく。
樹の手紙にはもちろん動揺している。
飲みこみきれなくて混乱している。
でも、今、詩織の心を絞った言葉に涙がじわりと滲みでてくるんだ。
言葉ではうまく言い表せない。
だけど、重なる。
あの日の夕暮れ、大好きな幼馴染ふたりが恋人のように見えた時、一歩後ろに立っていた私と……。
この間、明らかに樹を想い浮かべて後夜祭の話をしていた詩織を見て、手紙のことを話さずに口を噤んだ私も……。
だから、心が震えるの。