手紙は時を駆け抜けて
「亡くなっても樹はよ、ヒーローみてぇだよな。アイツみたいになりてぇって憧れて、でも同時に自分のダサさばっか目立って。だからよ、樹の友達でいるのやだったわ、ははっ……」
頭を掻き、いまだ静かに涙を零す彼女におどけて笑う康太。
ハンカチは依然、彼の手の上で彼女の手を健気に待ち続けている。
「だけど、好きなヤツの心持ってかれても、イケてる俺より眩しく輝かれてもさ。今も泣けるくらい、最高のダチなんだよなぁ」
彼は歯を見せて晴れやかに笑う。
詩織はそんな彼を前にまたぼたぼたと涙を落とす。
観念した王子様の手は、ずっと思い続けているお姫様の、詩織の頬をそっと拭う。
「そんなこと気にしてた俺、ダセぇよな。最近やっとそう思えるようになった。みんなそんなもんだから、ほら、泣くなって」