手紙は時を駆け抜けて
ラブレターなんて縁はない、なら、嫌がらせ?
背中を過ぎていく生徒たちから、体で下駄箱を隠す。
カバンを放り出し、封筒を手に取る。
封のされていない口から、手にあたった一枚の紙切れを一息に引きぬいた。
紙をひろげた瞬間、手からひらり、封筒が舞い落ちた。
息がつまって声が出ない。
紙を持つ手は震えきり、刻まれた文字が揺れる。
私は首を何度も横に振る。
だって、あり得るはずがないんだ。
崩れのないそろった几帳面な文字。
見覚えがある?
ううん、それくらいのものではない。
何度も見たこの字を忘れるわけがない。
私がたったひとり知っている、いつも前向きに夢を追っていた人。
私の大好きだった人。