手紙は時を駆け抜けて
<学園祭の夜、屋上に来てくれないか? 樹より>
足元がよろけて、耐えられずに下駄箱へもたれかかる。
全身にもう力が入らない。
約一年前のあの日の急落していく感覚がよみがえってくる。
私の心が止まったあの日……。
見開いた瞳が瞬く間に潤む。
「どうして、今になって……?」
消え入りそうな声が唇の隙間から零れおちる。
これはいったい何のイタズラなのだろう。
イタズラにしては、あまりに酷過ぎて笑えない。
だって、絶対に手紙なんて来るはずがないんだ。
樹は、去年の秋に亡くなったのだから。
私は周りも気にせず、膝を折って崩れる。
人の行きかう玄関で、私の影だけが床にべったりと貼りついていた。