僕は、君が好きです。
「え、ドジ?…ひどくない?」

真凛が少し膨れて俺の顔を見た。

「…っていうかさ…

女子って裁縫じゃないの?」

そう言うと真凛はムッとした表情になる。

「わるかったわね、看板塗ってて…

私は、裁縫得意じゃないんだもんっ。

知ってるクセに…私が不器用な事。

女子が皆、裁縫得意とか偏見だからね。」

真凛は俺の顔を見ながら

少しだけ怒った顔をする。

「アハハハッ…!」

「ちょっと、何で笑うの?」

俺は真凛の問いかけを無視して笑い続けた。

それはけして可笑しいからとかではなく

久しぶりに…

真凛とちゃんと話をした事に対する

嬉しさと懐かしさからだった。

俺はこの空気が好きなんだと

改めて感じたから…。

本当はさ…嬉しかったんだ。

そして、悲しいほど切なかった。

「刷毛は、そっちの奥にあったぞ。」

俺が刷毛があった方に近づくと

「え、本当?」

真凛も同じ方に近づいてくる。

「あっ!あった…。」

「あっ…!本当だっ…!」

その瞬間…

二人で同じ刷毛を持っていた。

そして

俺の手の上に真凛の指が乗せられていた。

ドキン、ドキン…

俺の胸が跳ね上がる。
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