僕は、君が好きです。
「きゃあ~、仲原くんカッコいい!」

「あっ!仲原くんだぁー!」

女子がきゃあきゃあと興奮気味に

廊下で騒ぐ声が聞こえてきた。

「真凛~見て!見て!

仲原くんのカフェ店員の衣装…

超~似合ってるよ!」

ジュースを拭いている私の横で絵莉ちゃんが

私の肩を軽く揺らした。

「え…?」

私が顔を上げると

カフェ店員の衣装に着替えた泰詩が

少し面倒くさそうな表情をしながら

教室に入ってくる。

黒のベストとバリスタ風の黒のエプロンが

高い身長の泰詩によく似合っていた。

「やっぱり…

仲原くんが断トツで似合ってる!」

絵莉ちゃんはそう言って

少し頬を赤く染めながら

笑っているのを見て

私は何とも言えない気持ちになる。

周りの女子が泰詩の事を騒げば騒ぐほど

私は複雑な気持ちになっていく…。

「あ~、泰詩!スマイルが足りないっ!

学園祭だよ?お前さぁ…

祭りなんだからさぁ~、顔が固いから!

イケメン度120%でな!

ちゃんと愛想良くしろよな?」

仏頂面の泰詩に佐伯くんが話しかける。

「それは無理っ…。」

「何だよそれ~!

女子が泰詩のイケメン店員

楽しみにしてるんだぞ~!」

「あー、隆司うるさい…わかったよ。」

そう言って少し呆れ顔の泰詩が

オーダーを取りに歩いていった。

その姿を教室にいた他校の女子達が

チラチラ見ているのが目に入った。

前は周りの女子が泰詩を見ている事で

こんな気持ちにはならなかった。

でも…今は違う。

周りが騒げば騒ぐほどに泰詩が遠くなって

どこかに行ってしまうって怖くなる。

もし、泰詩に他に好きな子ができたら

どうしよう…。

泰詩モテるし、泰詩が好きなんて言ったら

きっとすぐに両想いになる。

そしたら私の事なんて

遠い昔の過去になって忘れてしまうかも…。

私達が過ごしてきた日々も

二人で見た景色も

何もかも消えてしまう…。

バカ…

好きなのやめるって言ったのは私…。

泰詩の気持ち踏みにじったのは私…。

私がした事は決めた事は…

そういう事なんだ。

泰詩が私をずっと好きでいてくれるかも

なんて考えてるのが恥ずかしい…。

本当に図々しい…。

私は嘘つきでズルくて…最低だ。









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