僕は、君が好きです。
「隆司にまんまとやられたな…。」

泰詩が佐伯くんの後ろ姿を見送りながら

ボソッと小さな声で呟いた。

「え?どういう事?」

私が泰詩の顔を見上げると

泰詩は私の手に持っていたチラシを全部

自分の手に取った。

「だから…どう考えても

これって、ていのいい雑用だろ?」

そう言って泰詩は少しため息をつく。

「えっ、そうなの…?

佐伯くんは優しさで

そうしてくれたんじゃなかったの?

だって…私達、当番の途中で

抜けちゃったんだよ?」

私が真剣な顔で泰詩を見ると

「プッ…」

泰詩が私を見て吹き出して笑った。

「アハハ!」

「え?何で笑うの?私は本当に…」

本当にそう思ったんだよ?

だって佐伯くん…

泰詩の事、連れてきてくれた。

さっきまで…すごく遠くて

もう手なんて届かないって思ってたのに。

だから…ほんの少しでもいいから

この一瞬でも泰詩が私の隣にいて

嬉しいよ…。

だからこれは佐伯くんの優しさだって…

そう思うんだよ…。
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