僕は、君が好きです。
「乗れよ…」

「え…大丈夫だよ、いいよ。」

「大丈夫なわけねーだろ。」

「いいの…っ!大丈夫なの!」

「は?…何言ってんだよ!

このままだと、凍死するぞっ…。」

「…凍死?」

「あぁ、凍死するぞ!」

俺は、真凛に冷たく言い放ったが

それでも、真凛は背中に乗ろうとしない。

「っ…本当、バカッ…世話が焼けるヤツ…。

じゃあ、無理矢理にでも連れてく…!」

俺は、 そう言って真凛をおぶった。

「えっ!ちょっと…泰詩!

泰詩っ…やだっ、下ろしてっ!」

「…」

「泰詩…!!」

「…」

そう言って真凛は少し暴れた。

けれど…

俺が無視して歩き続けると

ようやくおとなしくなった。

「泰詩……」

「……あぁ?まだ文句か?」

「ううん…違う…ありがとう…。」

「だろうな…。」

「それと、ごめんなさい…」

「わかればいいよ…。」

「ごめんなさい…。」

「だから、もう…いいよ。」

「…違う…ごめん。」

「違う?じゃあ、何が?」

「色々…」

「色々って何だよ…?」

「…ごめん。」

「だから…何の?」

「…ごめん…」

ごめんを何度も繰り返す君に

胸が締め付けられ

その背中に君の温もりを感じながら

俺は、ゆっくり歩き続けた。

だからごめんって…

どのごめん?

何のごめん?

「泰詩…」

「うん?」

「泰詩は優しいね…。」

「え…?」

「優しくて……辛い…。

私は…もう

泰詩に優しくされる資格ないのに…。」

「えっ、何だよさっきから…

ちゃんと言えって…。」

「ううん…何でもない…。」

「何でもないって…あのさ真凛は…」

「…雪…積もりますように…」

俺が真凛を問いただそうとした

その瞬間…

背中で真凛は呟いた…。

「…雪の匂いがするね…。」

君がそんな事を言うから…。

俺は、聞きたい事が山ほどあるって

いうのに…。

渋谷とまだ付き合ってるの?

何で俺を避ける?

岸田さんと何かあった?

どうして…俺にそんなに謝るの?

何がダメなの?

全部、聞いてしまいたいのに…。

だけど…

今はもっと大切にしたい何かが

ここにある気がした…。

君とのこの時間に…

君と一緒にいるこの瞬間に…

目には見えない…。

けれど確かにここにあった。

…君が雪の匂いが好きだったなんて

ほんの些細な小さな事…

とるに足らない事かもしれない。

ただ、それだけの事…

だけど…

俺にはそうは思えなくて

君の笑顔を初めて見た日の衝撃を

思い出していた…。

君と僕はどこか似ている。
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