僕は、君が好きです。
「泰詩、また背が伸びた?」

そう言って教室中に響くような声で

話をする佐伯くん。

「伸びた…っ!すげーだろ?

今178センチあるっ!」

そんな佐伯くんに応えるように

泰詩の瞳は、子供みたいに

キラキラしている。

泰詩は、たまに

こんな子供みたいな表情をする…。

そんな泰詩が可愛いなって思う。

「プッ…何その…自慢気っ、、。」

佐伯くんが思わず吹き出して笑うと

泰詩もフッと吹き出して笑っている。

大きな瞳が少し細くなって涙袋ができ

口元から白い歯がこぼれた。

この笑顔…

ずっと私に向けられていたのに。

私だけを見てくれていたのに。

いつもの泰詩なら…

真凛、足…大丈夫か?まだ痛い?

私が、痛いって答えたら…

そっか…あんまり無理するなよ…?

きっと、そう言ってくれた。

そんな事を考えていると…

泰詩は、佐伯くんと

話ながら帰り支度をし出した。

泰詩…帰るんだ…。

「市ノ瀬、ワーク揃った?」

渋谷くんが自分の席から私に声をかけ

ボーッとしていた私がまた教室を見渡すと

泰詩は、佐伯くんや他の男子や

絵莉ちゃん、数人の女子達と

教室を出ていこうとしていた。

「あっ、うん…大丈夫だよ。」

泰詩は、私の方は一切見ずに

話ながら教室を出ていく。

それを私は、ただ黙って

見送るしかなかった。

ねぇ、泰詩…

私、あなたが好き。

ずっと…ずっと傷つけてきたから…

もしかしたら嫌になっちゃったのかな?

それも仕方ないけど…

でも、この前の言葉を信じるって決めた。

だから私……

あなたの言葉をずっと信じるよ?

あなたが好き…。

これからは、私がずっと信じる…。
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