僕は、君が好きです。
ガラッ

「失礼しました…。」

「渋谷くんありがとう…

ワーク全部持たせちゃってごめんね…。」

「全然!余裕だから大丈夫!」

「それより…足大丈夫なの?」

「あ、うん…大丈夫…

けっこう良くなったよ。」

「なら、いいけど…」

私がまだ右足を庇いながら

歩いているのを見て

渋谷くんが心配そうな視線を送ってくる。

「じゃあ、今から合流する?」

「合流…?」

「ほらっ、忘年会?

まぁ、試験お疲れさま会みたいな?」

「……」

あっ、そっか…前に泰詩が言ってたやつ…。

「自由参加だけど市ノ瀬は、どうする?」

私…誘われてないな…。

「市ノ瀬?」

「あっうん…

私、ちょっと用事があるから…

行けない…ごめんね。」

そう言って渋谷くんに

何も知られないように

昇降口で靴を履いて外に出る。

「え…市ノ瀬!ちょっと…待って。」

渋谷くんの声が私を追いかけてくる。

私は、一人で駅の方に向かったが

ガシッ!!

すぐに私の左腕は渋谷くんに捕まった。

「もしかして…市ノ瀬、聞いてない?」

私が振り返って渋谷くんを見ると

渋谷くんは私の顔を食い入るように

覗き込む。

「え…」

渋谷くんの目があまりにも真っ直ぐ

私を見つめるから

嘘をつけずに思わず私は頷いた。

その瞬間…渋谷くんは

私の左腕を力なく離した。

「はぁ…そっかぁ……っ何だよ……それ。」

渋谷くんは、私以上にショックを受けている

様子で私に背を向けてうな垂れている。

「…渋谷くん?…大丈夫?」

私が渋谷くんに少し近づきながら

声をかける。

「……はぁあぁっ…。」

それでも聞こえてないみたいに

まだうな垂れている。

「あの…渋谷くん?」

ガバッ!!

「えっ!」

急に渋谷くんは振り返ると

私の前で頭を下げた。

「市ノ瀬……

ごめんっ、俺…全然力になれなくて…。

やっぱ俺じゃ…仲原にはなれないな…。」

「渋谷くん…?」

「本当に情けないよな…。」

「渋谷くん…頭を上げてよ…。」

渋谷くんの目を見て私は、笑った。

「渋谷くんはいつも

私が辛い時に黙って隣にいてくれた…

こんな私を応援して励ましてくれた…

本当に、本当に嬉しかった…。

ありがとう…。」

そう言って笑って渋谷くんを見上げた。

渋谷くんは、私の顔を見つめると

しばらく目を閉じて

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ、、、っ!!」

大きなため息をついた。

「渋谷くん?大丈夫…?」

私が渋谷くんの顔を心配そうに覗くと

渋谷くんは、私の顔を優しい表情で

見下ろしていた。

「反則だよなぁ…。」

「えっ?」

「何でそんなに可愛いんだよ…。」

「…えっ」

「本当はさぁ…市ノ瀬が困ってるのを

利用してたんだよ…っ、、、

傍にいたくて…でも傍にいると

全然諦められなくて…

それ以上に一緒にいればいるほど好きで…

どうにかして…

また振り向いてほしかったんだ俺…っ。

未練がましいよなぁ…っ、、、。」

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