僕は、君が好きです。
私の顔を見つめながら渋谷くんは

切なさそうに何とも言えない表情で

微かに笑っている。

「渋谷くん?」

「市ノ瀬……やっと笑った…。

ずっと悲しそうで

いつも泣きそうな顔してたのに…。

今日…

教卓の前で仲原と話してるの見て

市ノ瀬って…

あんなに自然に笑う子だったんだって

俺が好きになった子はあんな風に

可愛く笑う子だったって思い出したんだ。」

「……渋谷くん。」

「俺じゃあ、全然ダメ…最初から

全然ダメだったんだよなぁ……。」

「そんな事ない…私は感謝してる!

私は、渋谷くんに…」

出会えて本当に良かったよ…。

そう言いかけて渋谷くんが遮った。

「感謝か…それじゃダメなんだよなぁ…

やっぱ俺じゃダメなんだなぁ…。」

そう言って渋谷くんは寂しそうに笑った。

「じゃあ、行こうか!」

「え?行くって?」

「乗り込んでやろう!!」

「えぇ……乗り込むって…っ。」

渋谷くんは、私の左手を掴んでゆっくり

歩き出した。

「渋谷くん…どうするの?」

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