僕は、君が好きです。
「どうしよう…今さら戻れない…。」

私が困って駅の改札の前に

立ちすくんでいると

「市ノ瀬っ!」

不意に私の名前を呼ぶ声がした。

振り向くと渋谷くんが、息を切らして

私のカバンとコートを持って立っていた。

「え…何で…渋谷くん?」

何で渋谷くんがいるの?

「よかったぁ…。」

「渋谷くん…。」

「どうしたっ…?

急にいなくなったから…

心配で…電話しても出ないし…

まさかと思って駅にきたら

市ノ瀬が見えたんだよ…。」

「追いかけてくれたの?」

「うん…

無事に見つかってよかったぁ…。」

「ごめんなさい、心配かけて…。」

「いいよ…それより大丈夫?」

「…うん…」

「本当に?」

「うん、大丈夫…。」

「そっかぁ…でもさぁ…

本当に大丈夫なヤツはそんな顔しないよ?」

「そんな事…」

私が渋谷くんの顔を見上げると渋谷くんは

私を優しい瞳で見つめていた。

「さっきからずっと…

泣きそうな顔してるじゃん。」

そう言って渋谷くんは、私の頭を優しく

撫でた。

「うっ……グスッ…」

その瞬間ポロポロと私の涙は頬を流れて

渋谷くんの前で

なりふり構わず泣きじゃくってしまった。

その間ずっと渋谷くんは

私の頭を優しく撫でてくれていた。

渋谷くんはスゴいなぁ…

私が困ってるの知ってて

こうやって気にかけてくれて……。

私は弱いから

すぐに自分の事で精一杯になって

余裕がなくなってしまう。

そして誰かに頼ってしまう。

絵莉ちゃんの言った通り…だ。

私…強くなりたい…

もうこれ以上、自分の弱さで

誰かを傷つけてしまわないように…。

大切な人を守れるようになりたい。

泰詩…あなたが好き。

ずっと言いたかったのに

ずっと言えなかった。

でも…本当はいつでも言えたよね。

言えなかったのはやっぱり私が

弱虫だから。

ちゃんと言えばよかった。

私は、あなたが好きです…って。

絵莉ちゃんの話…嘘って信じたい。

泰詩、何を考えているの?

もし何か理由があるなら…

そうしなきゃいけないわけが

あるとしたら…少しだけ救われる。

でも、それが私のせいだとしたら?

また泰詩が私のために苦しんでいたなら

私…泰詩の傍にいたらダメなのかな。
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