僕は、君が好きです。
俺は女子達の声に気づいて

とっさに岸田さんの口を自分の手で

覆ってしまった。

俺が岸田さんから離れると

岸田さんは自分の口を

手で押さえながら

俺の顔を見上げると

「…わかった…私の負けだね。」

一言、俺にそう言った。

「えっ…」

思いもよらない答えに少し驚いて

岸田さんを見る。

「だって…今の仲原くん必死すぎて…

本当にバカみたいに必死すぎて

可哀想なくらいに…必死で…。

これって、全部…

真凛の為なんだよね?」

「…うん」

「ほんと…真凛はズルいなぁ…

いつもいつも仲原くんに守られてさ…

こんなに必死になってもらえるなんて…

ほんと…ズルいなぁ…。」

そう言いながら岸田さんは俺から離れて

背を向けた。

「岸田さんや他のヤツが

どう思っていても…

俺はそんなつもりでやってないから…。

…真凛はさ…バカみたいにお人好しで

いつも自分の事より人の事考えちゃって

自分の気持ちを抑えて

色んな事、我慢する癖があるんだ…。

真凛は…周りにいる人の事

皆、好きになるし…信じて疑わない。

それに天然だから、他とズレてるし。

でも……

アイツは誰かの悪口とか絶対言わない…。

いつもいい所を探してて…

昔から俺、そういうのスゲーって

そう思ってる…

岸田さんの事だって大好きだよ。

スゴいスゴいって言ってたよ…。

多分…今だってそう思ってると思うよ?」

俺のその言葉に一瞬岸田さんの肩が

動いた気がした。

「そんな訳ない…っ。」

「うん…

そう思うのが普通なんだけど…ね。

そうじゃないのが真凛なんだよ…

アイツはそういうヤツだから…

ずっと…。」

「仲原くんは…

ずっと真凛を見てたんだ…。」

「…見てたっていうか隣にいたから…

自然と目に入ったっていうか…。」

「…隣にいたから?

…普通そういうのって

何て言うか知ってる?」

岸田さんは少し笑ってそう言うと

振り返りながら俺の顔を見上げた。

「……私、仲原くんが好き。」

「え……」

「好きじゃなくてもいい…

付き合ってるフリでいいから…。」

「どういう事…?」

「付き合ってるフリしてくれたら…

真凛にもう何もしない…

…させないから。」

「……??」

「…だからしばらく私と付き合って?」

「やっぱ…真凛に何かしてたんだ?」

「………だったら?」

「……は?」

何だよそれ…脅しか?

俺が付き合わなかったら

一体…真凛に何するつもりだよ?

最悪だ…。

「普通に軽蔑する。」

「…そっか…だよね。」

俺の言葉に岸田さんはため息を

つきながら俺の顔を見上げた。

「…わかった。」

「えっ?」

「いいよ…付き合っても。」

これで真凛を助けられるなら…。

守れるなら…

俺は嘘つきでも恥ずかしい奴でも

何でもなってやるよ。
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