僕は、君が好きです。

「…泰詩……？」

「そんな事するわけないだろ…っ。

何だよ、それ…。

……自惚れすぎじゃないの？」

そう言って俺は真凛の前を通り過ぎて

歩き出した。

ドクン、ドクン……

さっきからわざと真凛に冷たくしている。

今は、誰も見ていないのに…。

こんな自分の態度で、胸が苦しくて

だんだん息苦しくなっていく。

「泰詩！泰詩……待って。」

真凛が俺の後を追いかけてきて

俺の左腕を掴んだ。

「……泰詩

絵莉ちゃんと付き合ってるって本当？」

「…え？」

「絵莉ちゃんが…

泰詩と付き合ってるって…。」

岸田さん……言ったんだ。

俺の左腕を掴んでいる真凛の手に

ギュッと力が込められたのがわかった。

今日のクラスの女子の真凛に対する態度…

あれがずっとなんて真凛…地獄だろ。

このまま嘘ついて真凛を守れるなら…。

俺は君を守るかわりに君を突き放す。

「……うん、付き合ってる。」

俺が答えた瞬間……

掴んでいた左腕を真凛が離した。

「えっ……何で…？」

「何でって…告白されたから……。」

「告白……？」

そう言って真凛が俺の目の前に立つと

今度は両方の腕を掴む。

「……泰詩、無理してる？」

真凛の瞳に涙が溢れてきている。

「何で…そうなるんだよ？

俺の意思だし…無理してないから。

だからもう、悪いけど…

真凛の傍にはいられないから…。」

「……泰詩…私…の為に？」

「バカかっ、何でだよ…っ。

俺は、岸田さんと付き合うって

そう決めたんだ…。」

「私…」

そう言いかけた真凛の瞳から次から次に

大粒の涙が溢れてきていた。

「……私は…ッ」

「ごめん……離して…」

俺はそう言って真凛の手を掴むと

「…嫌っ…泰詩…離さないで…」

泣きじゃくる真凛の手が震えていた。

「ごめん……」

俺は、その手を離そうとした時…

「…泰詩……」

真凛がギュッと俺の手を握りしめた。