僕は、君が好きです。
キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴って女子が教室を出ていった。

「はっ、早く着替えよーぜ。

体育遅れるとヤバイぞ。」

俺は隆司の言葉に少し動揺していたが

すぐにそんな筈がないと考え直した。

「はいはい…あー、それにしても

男子更衣室いつになったら

使えるんだぁー?」

「さぁな。」

「いつの間にか女子いねーな。

真凛ちゃんもいなくなっちった。」

「当たり前だろ…

いたら逆にマズイだろーが。」

「いて!!

ピアスがシャツに引っかかった。」

「わ~っ、泰詩ヘルプ~。」

「たくっ…!

俺まだTシャツ着てねーのにっ。」

ガラッ!!

勢いよく教室のドアを開ける音がした。

「あっ!!ごめんなさいっ!」

聞き覚えのある声が聞こえてきた。

まさか、真凛?

「市ノ瀬さん、エッチ~!!」

一斉に男子が騒ぎ出す。

俺も振り返ると

真凛が顔を真っ赤にして固まっていた。

何してるんだよ。

早くしめろっ!

俺は急いでTシャツを着て

真凛の前に立って背中越しにドアを閉めた。

「バカっ!早く閉めろよ。」

「うん…ごめん。

まさか男子が着替えしてると

思わなくて。」

「今、男子更衣室使えないから。」

「それより、どうした?」

「タオル忘れちゃって…。」

「どこ?」

「多分、カバンの中。」

「わかった、ちょっと待って。」

俺は、教室に戻り

真凛のカバンを手にとった。

教室の中では男子がまだ騒いでいた。

「真凛ちゃんに見られちったぁー。」

「ガン見だったよな?」

「案外エロ?」

「いいねぇーギャップか?!」

イライライラ…

「うるせー!…いい加減にしろ。」

そう言って俺は冷たく睨んだ。

真凛はお前らなんか見てねーよ。

俺は教室のドアを勢いよく開けた。

ガラッ!!!!

真凛がびくっりした顔を俺に向けた。

「ほらっ。」

真凛にカバンを渡した。

「うん…。」ガサガサ

「あった!!

…あっ、カバンどうしよう。」

「戻すか?」

「ううん、いいよっ…

なんか悪いし、それに…

何かあったの?」

「え?何で…?」

「だって泰詩…

凄く恐い顔してるから。」

真凛が不安な顔で俺を見上げた。

「ばーか!

なんでもないから心配すんな!

体育遅れるぞ。」

そう言って少し笑って見せると

俺は真凛からカバンを取り上げた。

キーンコーンカーンコーン

「あっ!チャイム!」

「ごめんね…泰詩ありがとう。」

真凛はニコっと笑うと

走っていった。

俺は真凛の後ろ姿を見送っていた。

「泰詩くん、かっこいい~。」

隆司が俺の後ろで笑っている。

「隆司、うるさい。」

俺は隆司をチラッと睨んだ。

「怒るなよ~!

俺たちも行こうぜー 遅れるわ~。」

隆司が俺の肩をポンと触った。

「おう…。」

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