僕は、君が好きです。
「そんな悲しそうな顔しないでっ!

会えたんだから、いいじゃん…

そっかぁ…じゃあ、良かった!」

佐伯くんは、それだけ言うと

ベンチに背中をつけて私の方に顔を向けた。

佐伯くんはすぐ隣で何も言わずに

ずっと私の顔を見ている。

しばらく沈黙が続き…

この状況がだんだん恥ずかしくなっていく。

「…佐伯くん…?」

そう言って少しだけ顔を見ると

佐伯くんは、クスクス笑い出した。

「…えっ」

「アハハッ!ごめんっ!

真凛ちゃんは正直者だなぁって…

もっと渋谷の事を

利用してやればいいのにって思って…

しないんだなぁって…。」

そう言って佐伯くんは、笑いながら

ベンチから立ち上がった。

私は、佐伯くんの言葉に呆気にとられて

しばらく佐伯くんの顔をただ見上げていた。

「ごめんっ!怒った?」

「え…そんな…」

「本当に?よかったぁ…!

やっぱ真凛ちゃんって可愛いねっ。」

「…え?」

私は目を丸くして佐伯くんを見た。

「そういう反応が可愛い!

ずっと見てたくなっちゃう感じ…

俺でこんな風になるんだからさっ

渋谷なら尚更…じゃん?

…一緒にいるだけで嬉しいし

頼られたいと思ってるよ…っ?」

「そ…そんな事…っ

渋谷くんに失礼だよ…。」

首を横に振る私を見て佐伯くんは

少し笑っている。

「アハハ…真凛ちゃんってさぁ

やっぱ正直者だね…嘘つけなくて…

自分より他の人の事を思いやってさ…

一見フワフワしてるけど、芯がある。

可愛い花と見せかけて実は雑草並みの

強さがある。

泰詩が好きになるのがよく分かるよ…っ。」

そう言って佐伯くんは、またベンチに座ると

急に真剣な顔になっていた。

…佐伯くん?

「…今、泣いてたのは渋谷の事?」

「え…」

「それとも…泰詩の事?」

「…それは」

佐伯くんは私の答えを黙って待っている。
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