僕は、君が好きです。
30分前………プシュー

電車の扉が閉まる音が駅のホームに響く。

真凛が俺にバイバイと言って、背を向け

歩き出した時…

俺は、とっさに君を掴まえていた。

そして、溢れでる想いをぶちまけた。

そんな俺を…ずっと苦しそうな瞳をして

見つめ続ける君の腕を掴むと

ホーム階段下の端に連れていき

隅に追いやった。

逃げられないようにまるで通せん坊を

しているかのように

真凛の前に立ちはだかっていた。

ただ…真凛に本当の気持ちを

話してほしくて…。

最後の望みを掛け、祈るような

そんな気持ちで真凛の答えをじっと

じっと待っていた。

長い沈黙……

真凛のうつ向いた顔を見つめていた。

こんな時でも思ってしまうのが…

さっきの真凛の瞼を閉じた顔だった。

恥ずかしそうに顔を真っ赤にして

じっと固まっていた真凛…。

鼻先が触れるくらいの距離で

君の顔を見るのは初めてだった。

柔らかそうな唇がすぐそこにあった…。

真凛の唇をじっと見つめながら

さっき…どうして君にキスをするのを

やめてしまったのか後悔した。

でも、あの時…

その場の勢いでキスをしようとしたけれど

いざとなると怖じけずいて…

真凛がもし本当は、嫌だったら…

なんて思うと…もう、それだけで

体が動かなくなってしまった。

結局…

どうしたらいいのかわからなくて

誤魔化すような事しか言えなかった。

そんなんだから、いつまでたっても

俺は、真凛にとって

幼馴染みの友達なんだ……って

自分で突っ込んでしまった…。

いつも素直になれなくて

空回りして後悔ばかり。

でも昔からずっと何をしてても

誰といても

気になるのは君だけだった。

今…目の前に君がいる。

手を伸ばせば触れれる距離…。

真凛の長い睫毛、桜色の可愛い唇に

吸い寄せられるように

うつ向いたまま黙っている君の顔をずっと

見つめていると切なさが

胸を襲ってくる。

電車が何本も停まってはまた発車し

その度に、乗客が降りてきて

ホームが騒がしくなる。

プシュー

また電車が到着してドアが開いた時

「…真凛?」

俺は、たまらずそう言って

うつむく真凛の顔を覗き込んだ。

「…あの…」

真凛が不意に顔を上げて潤んだ瞳が

俺の顔を見上げた。

その瞳にまた胸が締め付けられ

言葉が出なくなる。

真凛は何か言いたそうな顔をして

それが上手くでてこないみたいな

困った表情をしていた。

「…あのね…」

真凛の顔をじっと見つめながら答えを

待っていた。

「…あの私ね…」

真凛が話そうとしたその瞬間

言葉を遮るかのように声が聞こえる。
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