僕は、君が好きです。
家を出るとちょうど泰詩も家から出てきた。

「泰詩、おはよう!」

「…」

「泰詩?どうしたの?」

「…」

え?無視?

それに…

泰詩は歩くのが早くて

なんかいつもの泰詩じゃなかった。

私は泰詩を追いかけて小走りになる。

「ねぇ、ねぇってば!聞いてる?」

「……」

泰詩はどんどん私を置いて

歩いて行ってしまう。

どうして…?

どうして泰詩私を無視するの…。

泰詩…。

私…嫌われたのかな?

「泰詩…!」

泰詩の背中に向けて叫んだけど

泰詩は振り返ってくれなかった。

やっぱり嫌われたんだ……。

そう思った途端に

なんだか凄く苦しくて悲しくて

昨日のお姉ちゃんと蒼太くんの事を

思い出して色々な気持ちが涙になって

込み上げてきた。

「ウッ…ク…」

涙が一度出てきたら

もう止められなかった。

どんどん洪水のように溢れてきて

視界が霞む。

ポタポタと地面に落ちて

アスファルトが濡れた。

私は立っていられなくて

その場にしゃがみこんでしまった。

「グスッ…ヒック…」

暫く、動けずにいると…

ぐいっ!

急に腕を誰かに捕まれた。

「何やってるんだよ…。」

泰詩の声…。

「だって…ウック、だいしがぁ…ヒックッ」

「ごめん、ごめんな…

もう、無視しないから。」

「ほんどうに?ウック…」

「本当に、だから泣くなよ。」

「うん…。」

涙でぐしゃぐしゃの顔を

泰詩が自分のタオルで拭いてくれた。

「ありがとう…。」

顔を上に上げると

泰詩が私の顔を優しく見下ろしていた。

私はなんだかホッとして

思わず泰詩に抱きついてた。

「……っ!」

「私の事一人にしないでよぉ…。

泰詩は私の側にいてよぉ…。

私を嫌わないで…。」

「えっ?」

「泰詩のいじわるぅ…。」

「真凛…。」

私は、抱きついた腕をぎゅうぎゅう強めた

ぎゅー、ぎゅー、ぎゅー、って

なんか安心して心地いい。

「真凛、腰が痛い…。」

その言葉にハッとして手をパッと放した。

「あっ!ごめん!」

泰詩の顔を見たけど

泰詩は私から顔を背けて歩き出した。

「なんなんだ、お前わぁ~。」

泰詩のため息混じりの声が聞こえてきた。

「だって、泰詩が私の事

嫌いになっちゃったのかなって…

不安になって…。」

「嫌いに?」

「うん、だって昨日…

電話切るし、無視するし…。」

「それは真凛が…。」

「えっ?私?」

「いや…ごめん。」

「私…泰詩に

そんなことされたら悲しいよ。」

「…俺以外なら?」

「え?」

「俺じゃなかったらどうなの?」

「それは…やっぱり寂しいかな。」

「じゃあ、同じじゃん。」

「でも!でも、泰詩は私の一番だから。」

「えっ?」

「一番の友達だから!」

そう言って私は泰詩を笑顔で見つめた。

「そっか…。」
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