僕は、君が好きです。
放課後俺が教室を出ようとすると
「あっ!泰詩!」
真凛が俺のブレザーを掴んだ。
「なんだよ?」
俺が真凛を見下ろすと
真凛が俺の顔を覗き込んでくる。
「泰詩、今日部活どうするの?」
「バスケ部、見学いくつもり。」
「そうなんだ、私も行こうかな~!」
「は?バスケなんかできないだろ?」
「う~ん、できない…かな?」
「じゃあ、やめとけ。」
「ぶーっだっ!」
真凛は口を尖らせた。
「じゃーなっ、気を付けて帰れよ。」
「やだぁー!やだぁー!やだぁー!」
真凛が俺のリュックをバシバシ叩いて
だだっ子みたいにしている。
「はぁ?なんだよ、子供かよ?」
「だって、一人で帰りたくないし
今帰るとお姉ちゃんに会っちゃう…。」
「じゃあ、どうするんだよ?」
「一緒に行く!」
「テニス部は?」
「う~ん…考え中。」
「っていうより…やめたんだろ?」
俺は真凛を冷たく睨んだ。
真凛は俺の顔を見ると
小さな顔をしかめながら
「だって…私、テニス無理だもん。」
「それに…。」
そう言いかけて下を向いた。
なるほどなぁ……
兄貴に会いたくないのか…
たくっ、単純…。
でもそんな君を可愛いって…
そんな風に思ってしまう俺。
そんな気持ちを悟られたくなくて…
「バカだな。」
俺はいつものように冷たく言う。
「ヒドッ!そんなことわかってるよ。」
「それに渋谷には何て言うんだよ?
ちゃんとお前の不純な動機を
説明したのか?」
「渋谷くんにはちゃんと
テニスは難しそうだから無理かなって
言ったから大丈夫なの~!」
「嘘つきめ…っ。」
「何とでも言ってちょうだい…っ。」
「開き直ったな…
でもバスケは本当に無理だろ。」
「その事なんだけどね、
実は絵莉ちゃんから
マネージャー誘われたんだ~!」
急に真凛は元気になった。
「マネージャー?」
「うん!絵莉ちゃんが誘ってくれたの!」
「絵莉ちゃん?」
「泰詩~、同じクラスの女子知らないの?
岸田絵莉(きしだえり)ちゃんだよー!
私の友達!」
真凛は頬を膨らませながら俺を見た。
絵莉ちゃんって、岸田さんのことか。
真凛の事も誘ったんだな…。
でも…
とりあえず真凛が元気で安心した。
そう思って真凛を見下ろすと
真凛は俺の返事を嬉しそうに待っていた。
俺はそんな真凛の仕草が
可愛くて仕方なかった。
「わかった、じゃあ行くか!」
「うん!」
真凛がバスケ部の見学に行くと案の定
男子達がチラチラ真凛を見ていた。
それに全く気がつかない
真凛はニコニコして
笑顔で応援している。
その日の内に
猛烈に勧誘された結果
俺と真凛は入部届けを出した。