僕は、君が好きです。
帰り道…
真凛はご機嫌で鼻歌を唄って
俺の前を歩いている。
そんな真凛の背中を見ながら俺も歩く。
ふと、クルッと真凛が後ろを振り返った。
「ねぇ、泰詩、原っぱ行こうよ!」
「原っぱ?」
「そう、原っぱ!昔、よく行ったよね。」
「うん…。」
「ねぇ、行こうよ!」
「しょーがねーな。」
原っぱに着くと辺りはもう
夕暮れで薄暗かった。
だから草花はよく見えなかったが
真凛は嬉しそうに俺の顔を見上げた。
「懐かしいね!」
「だな……」
「本当に泰詩は草花の観察が
好きだったよね。」
「いいだろ、別に。」
「ほめてるんだよ?草花とか詳しくて
凄いなーって思ってたんだよ?」
「…うん」
何か照れ臭くなる……。
「あれー、ないなぁ。」
真凛は何かを探しているようだった。
「どうした?」
「勿忘草。」
ドキンと胸が高鳴った。
「勿忘草…」
「うん、指輪作るの!」
ふと、俺の下を見ると
ブルーの花が咲いていた。
「あっ。」
「えっ?」
真凛が振り向いて俺の所に来た。
「あったぁー!!」
真凛は勿忘草を手に取ると
何を作るのかすぐにわかった。
「これを結んで、よいしょっ
あれ、なんか上手にできない…。」
「ヘタだなぁ、かしてみ。」
俺は、昔と同じように指輪を作った。
「ほら。」
「ありがとう!
やっぱり泰詩は上手だね~。」
俺が真凛に手渡そうとした時
真凛は自分の左手を差し出した。
「えっ?」
「つけて!」
「うん…。」
俺は昔と同じように
真凛の中指に指輪をはめた。
「わーいっ!ありがとう。」
デジャブかと思った…。
君はあの日と同じように左手を
夕暮れの空に向かって
かざして笑っていた。
やっぱり俺…
好きだ…君が好きだ…。