僕は、君が好きです。
俺と隆司がホールに行くと

もう一年がほとんど集まっていた。

「真凛!!早く~先生来ちゃうよ。」

女子の声が聞こえた。

真凛って聞こえたけど…。

振り返ると真凛と岸田さんが歩いてきた。

「あっ!真凛ちゃーん!」

隆司がブンブン手を振ると

真凛が軽く会釈した。

「なに、マネージャーも一緒になんだ?」

「うん、説明聞かないとね。」

岸田さんと隆司が話をしているのを

俺は黙って聞いていた。

真凛をチラッと見ると

真凛とバチっと目が合った。

「あっ…。」

その瞬間

真凛はパッと目を反らして

下を向いた。

もう、真凛は俺を見てくれない。

自分で言っといて、いざそうなると

何でこんなに苦しいんだろう…。

しばらくして先生が来て説明をし出した。

「夏休みは一週間、合宿があるからな!」

「マネージャーも来れるか?」

「大丈夫です。」

岸田さんが返事をした。

「…」

「市ノ瀬はどうだ?」

「あっ…はい、たぶん大丈夫です。」

「おー、よかったなぁ男子!

世話してもらえるぞ~。」

「あざーっす!」

男子ははしゃいでた。

特に隆司が…。

俺はそれどころではなくて

ずっと真凛を見れずにいた。

「じゃあ、解散~。」

「ありがとうございました~!!」

ミーティングが終わると

隆司がさっそく真凛に話しかけた。

「真凛ちゃーん、よろしくね。」

「あっ、はい。」

「えー!クラスメイトなんだからさぁー

敬語やめてよ!俺の名前わかる?」

「佐伯くんだよね?中学校一緒だったね。」

「俺の事覚えてるの?やったぁ~。」

「うん、泰詩とよく一緒にいるの

見かけたから…。」

「そっか~

泰詩と真凛ちゃん仲良しだもんね。」

「…」

「俺とも仲良しになってね?」

「うん、よろしくね。」

完全に隆司のペースにはまってるな。

「そう言えば…真凛ちゃん

今日泰詩と話してないじゃん。」

「えっ……。」

俺は隆司を二度見した。

隆司……今このタイミングで…

マジでありえねーから。

「なぁ、泰詩~

真凛ちゃん寂しそうだぞぉー?」

肘で俺の脇腹をつついてくる。

「よーし!岸田ちゃん

俺と教室帰ろうぜぇ~!」

「えっ?ちょっと…。」

隆司は戸惑う岸田さんを

連れて行ってしまった。

「……」

「……」

「ごめんね…。」

真凛が泣きそうな声で謝った。

俺は真凛を見た。

「私…泰詩をずっと

傷つけてたんだよね。

気が付かなくて…

ひどいことしてた。

私の事もう嫌だよね…。

私…どうすればいい?

わからないの…

だから…泰詩が嫌なら

もう話しかけるのやめるね…。

じゃあ…ね…。」

そう言うと真凛は歩き出した。

グイッ!

無意識だった…。

何も考えてなかった。

ただ、真凛を離したくなかった。

気がつくと俺は

真凛の腕を掴んでた…。

「泰詩…?」

そう言った真凛の目からは

涙が溢れていた。

「ごめん…

いっぱい泣かせて。

俺もいっぱい真凛を傷つけた。

嫌な事してごめん。

もう、しないから…

しないから…。」

俺のそばにいてほしい。

俺を好きじゃなくてもいいから。

「泰詩…いいの?

一緒にいてくれるの?」

「うん…。」

「じゃあ…これからも

今まで通りなんだよね?」

その言葉にズキッと胸が痛む。

ズキズキズキ…。

別に期待してた訳じゃないけど…

けど…

改めてそう言われるとけっこうキツイな。

「…うん。」

でも君がそう望むなら…

今まで通りにするよ…。

「私の事嫌いじゃない?」

「嫌いじゃないよ。」

「本当?本当に?」

「大丈夫だから心配すんなって!」

君を嫌いになんかなれない…。

泣き顔なんて見たくないよ。

「うん…よかったぁ…。」

そう言うと

真凛の顔がパーっと笑顔になって

俺の腕にぎゅーっとしがみついた。

可愛い…

何でこんなにいとおしいんだろう。

俺は我慢できなくて

思わず真凛を抱きしめた。

「えっ……泰詩?」

「ごめん、仲直りのしるし。」

そうごまかして俺は笑った。

君が俺を好きじゃなくても

そんなのもう、どうでもいい。

君がまた俺に笑ってくれるなら。

それに俺は君が好きだから…。

この気持ちは変わらないから。

どんなに苦しくても

やっぱり君が好きだ。

どんなんでも君と一緒にいられるなら

俺はそれが地獄でも構わないと思った。

抱き締めた腕の中の君を見ると

君の耳は少し赤くて

そんな君をずっと抱きしめていたいと

思ったんだ。





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