僕は、君が好きです。
え…?何?
佐伯くん…どういう事…?
私の考えてた事って…?
私の胸が急にザワザワし出した。
佐伯くんがいなくなると
泰詩が振り返って止まっていた。
えっ…泰詩?
私が泰詩の側まで歩いていくと
泰詩はフッと笑って私を見た。
「泰詩?」
「一緒に歩こう。」
そう言うと泰詩は私の右側に
並んで歩き出した。
「うん…。」
どうしてそんな優しい顔するの?
さっきまで冷たかったくせに…。
「そう言えば…
今日出た古文の宿題めんどいよな。」
「そうだね…。」
どうしよう…色々考えちゃって
何話したらいいのかわからない。
「大人しいじゃん。」
「そう?」
「前はうるさいほど話してきたのに。」
「うるさくなんかないです!」
「そうだっけ?」
だって…
泰詩はいつも絵莉ちゃんと話してるから。
「そうだよ…。」
私と話すよりスマホの方がいいくせに…。
そんな事を考えていると
悲しくて私は下を向いて歩いた。
「ほらっ!
下向いて歩いてるとぶつかるぞ?」
「それとも、また何か落ちてるのか?」
泰詩はそう言って昔と変わらない笑顔を
私に見せた。
「私は…下を向きながら
しっかり前を見て歩いているから
大丈夫なの!」
「はぁ?なんだよそれ。」
泰詩は呆れ顔で私をみながら笑っている…。
こんな泰詩の笑顔一つで
私も自然と話し出してしまうんだ。
"楽しいなぁ…"って…。
「そういえば…
泰詩っていつも私の右側を歩くよね?」
「え?」
「何で右側なんだろうって…
いつも思ってたんだぁ~、落ち着くの?」
私は泰詩の横顔を見上げた。
「…別に、いいじゃん。」
泰詩は少し照れたような顔をして前を見た。
「え?何で~?教えてよ!」
「うっさいなぁ~!金魚のクセにっ!」
「はぁ?何で金魚?やめてよ!」
そう言って私は頬を膨らませて泰詩を見た。
「あははっっ…!
怒るな、怒るな…
だって今日、口をパクパク
金魚みたいにさせてたじゃん。」
泰詩は笑いながら私を見てる。
「はぁ?何それ…違うからっ。
金魚じゃないよーだっ!」
「じゃあ、鯉?」
コイ…?
…えっ、こっ恋?
恋っ…?!
「鯉みたいだったじゃん。」
それって…もしかして…。
「え…泰詩に恋してるってこと?」
私、恋してるの?
「…………」
「お前、それってコイ違いだろ?」
泰詩が急に慌てた声を出した。
「俺が言ったのは魚の事で…。」
「あっ!ああ、鯉ね!なんだぁー。」
「泰詩やだぁ~!」
バシッ!!
私も慌てて泰詩の腕を叩いた。
「いてっ!」
私は、恥ずかしさで顔が熱くなっていた。
「……」
「……」
私が顔を上げると泰詩と目が合った。
私はさらに恥ずかしくなって
少し笑いながら目を反らした。
「渋谷とはどうなの?」
「え?」
泰詩がこんなこと聞いてくると
思わなかった。
「うまくいってるみたいだな。」
「え…何で?」
「いつも一緒にいて
楽しそうに話してるから…。」
ズキン……
何か泰詩にはそんな事言われたくないよ。
「……うん。」
「そっか。」
ズキン、ズキン…胸が苦しい。
「どうして?」
「えっ?」
「どうして、泰詩は普通にできるの?」
どうして平気なの?
「私、前みたいにしたいのに…
全然できないよ。」
どうして…私こんなになちゃったの?
「真凛…。」
「泰詩が…
泰詩が気になって私変なの!!」
「えっ?」
「泰詩が…私の事好きとか言うから…
泰詩の事ばっかり考えちゃうのっ…!
もう、何なのこれ…
胸が苦しい…苦しいよぉ…。」
涙がポロポロこぼれた。
どうしよう…泣くなんて…。
フッ…
泰詩が私の顔を触った。
ドキン、ドキン胸の鼓動が速くなる。
泰詩が触れた顔が熱くなる。
「真凛、俺が好き?」
「えっ?」
私は、泰詩の顔を見上げた。
泰詩は真っ直ぐ私を見ていた。
「俺の事好き?」
泰詩の視線が私に突き刺さってくる。