僕は、君が好きです。
「そっか…ごめんな、困らせて。

あのさぁ…

真凛には俺が前と同じに見えるの?」

「え?」

「真凛にはわからないか…。」

泰詩の声はとても寂しそうだった。

「え…わからないって?」

わからないって、何の事?

わからないよ。

だから…ちゃんと教えてよ…。

「…」

私の問いかけに

泰詩は黙って私を見つめている。

その目の奥に何とも言えない

悲しみが見えた。

その時の私はもう自分の気持ちを

吐き出す事しかできなかった…。

「同じに見えるよ…。

ううん、前よりずっと

遠くなった気がするよ…。

私に気を使ってるの?気まずいって事?

だったらそんなのやめてよ!

私もちゃんと前みたいにするから。

だって…私…泰詩の友達なんだよ?

いつも一緒にいて、隣にいるのが当たり前で

何でも話せて、楽しくて…それなのに

私…泰詩と前みたいに

話ができなくて寂しいよ…。

帰り道…今日だって

いつも絵莉ちゃんと話してるじゃん!

スマホでイヤフォンして

私と話なんかしたくないみたいに…。

私はいつだって泰詩と話をしたいのに…。」

「真凛…。」

「遠くにいかないでよ…。

私の傍にいてよぉ…。

私は泰詩がいないと嫌だよ…。」

ポロポロ…

いつの間にか私の目からまた涙が溢れて

泰詩の顔がぼやけて見えた。

「ごめん…。」

泰詩はそう言うと私を残して歩き始めた。

「泰詩…」

ねぇ…ごめんってどういう事?

他に何にも言ってくれないの?

私はこんなにも…

泰詩がいないとダメなのに…。

「泰詩は私と一緒にいたくないの?」

そう言って泰詩の腕を私は掴んだ。

私の手に力がこもる…。

ギュウーッ。

泰詩の腕、見た目は細くて

華奢に見えるのに固い…。

こんなの…

私の知ってる泰詩じゃない。

これじゃまるで男の人だよ。

何で…変わっちゃったんだろう…。

違う…。

ただ、私が知らなかっただけ。

私がずっと何にも気がつかなかったから。

私はずっとずっと…

涙が私の手にポタッと落ちた。

「真凛…」

泰詩は私の名前を呼び私の手を

そっと掴んで離すと

ポンポン…

泰詩の手が優しく私の頭を撫でた。

その手は大きくて温かくて…

不思議と安心するような感覚になった。

いつもみたいに泰詩に甘えたくなる…。

でも…それはできなかった。

…苦しい。

「泰詩…どうして?

どうして、今までみたいじゃダメなの?

私…泰詩と一緒にいたい。」

私が絞り出すような声で言うと

「うん…」

泰詩はそう返事しただけ…。

他には何も言わなかった。

そしてゆっくりと私の腕を引いて歩き出す。

そんな泰詩を斜め右から見上げると

その顔が寂しそうに見えて

だから…

ポロポロ…と

私の目から涙が溢れて止まらなかった。

泰詩…

やっぱり…ダメなのかな?

私の好きだと泰詩の傍にいられないのかな?

私の好きはダメな好きなのかな?

私、わからない…。

ねぇ教えてよ…泰詩…。

泰詩の好きは…どんな好きなの?

それって…どんな気持ちになるの?
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