僕は、君が好きです。

その時…

バシッ!!

強い破裂音が私の耳に響いた。

私が顔を上げると

泰詩の手を振り払った渋谷くんが

立っていた。

「渋谷くん…。」

渋谷くんは泰詩を睨んでいた。

「仲原さぁ、何なの?

もう…いいかげんにしてくれない?」

「真凛に気安く触ってんじゃねーよ…

そういうの、もう…うんざりなんだよ。」

渋谷くん…

渋谷くんのこんな低い声初めてだった。

そう言うと渋谷くんは私達に

背を向けて歩き出した。

「渋谷くん!!」

私は、渋谷くんを追いかけた。

このままじゃ…ダメだ。

「真凛!」

泰詩が私の肩を掴んだ。

「ごめん!私…行くね。」

そう言うと走り出した。

ハァハァハァハァ…

「渋谷くん!」

「待って!」

渋谷くんは渡り廊下を歩いていた。

私は、渋谷くんの腕を掴んだ。

「あの…話が…。

私ね…渋谷くんに話がある。」

「別れない…。」

渋谷くんがボソッと呟いた。

「えっ?」

「俺…別れるつもりないから。

俺の事好きにさせるって言ったし…。

だから俺…別れない。

別れる以外の話なら聞くけど?」

渋谷くんの声が渡り廊下に響く。

「あの、私…。」

私は今まで見たことない渋谷くんの表情に

何も言い出せなかった。

「話…他にないんだね。」

「えっ、違う…あのね…」

「何が違うの…?違わないだろ…。」

「…あ…あの私…

渋谷くんにちゃんと…言わないと…

私…渋谷くんともう」

「だからっっ!別れないって言った…!」

私の言葉を遮った渋谷くんの声は

少し震えていたみたいだった。

その時、初めて…。

初めて私は彼をずっと

傷つけてた事に気がついた。

私は、バカだ…。

渋谷くんはずっと

私の気持ちに気がついてたんだ。

気づいていたのに…。

それでも変わらず

私の事見ててくれて…。

好きでいてくれて、苦しませてた。

私…本当に最低だ…。

私はズルい…

渋谷くんを利用するような事して

謝っても許されない…。

「あ…あの…ごめんなさい…。」

目に涙が溢れてくる。

「渋谷くん…ごめんなさい…。」

溢れる涙を堪えながら

何度も何度も謝り続けた。

周りが静かなせいで

私の声だけが響いていた。

私は、必死に涙を堪えた。

…泣いちゃダメだ。

泣いたら渋谷くんを

もっと傷つけるから…。

「真凛ちゃ~ん泣かないで~!」

「俺も泣いちゃう~!」

佐伯くんの明るい声が

後ろから聞こえてきた。

えっ?佐伯くん?

そう思って振り返ると

クラスの男子が集まってきていた。

えっ…やだ。

皆、何でいるの?

どうしよう…見られてた?

「いやぁ、ごめんね!

聞くつもり

なかったんだけどさぁ。

教室に帰ろうとしたら

デカい声が聞こえてきたから~。」

佐伯くんが笑いながら言った。

「どうしたの~?夫婦喧嘩?」

クラスの男子がふざけて言った

その言葉に渋谷くんはキレてしまった。

「うるせー!!!!黙ってろ!」

渋谷くんが怒鳴って

男子に掴みかかった。

男子と渋谷くんが掴み合いの

喧嘩をはじめてしまった。

どうしよう!!

「渋谷くん!やめて!」

必死に言ったけど

渋谷くんは止まらない。

渋谷くんは悪くないのに

これじゃあ

渋谷くんが悪くなっちゃう…。

渋谷くんが男子を

殴ろうとしたその瞬間……。

渋谷くんと男子の間に泰詩が入った…。

バシッ!!

「いってーっっ。」

渋谷くんは泰詩の顔を殴っていた。

「はぁ?何だよ仲原!」

渋谷くんが驚いた顔で

また睨んでいる。

「いてぇな…とりあえず気がすんだかよ。」

泰詩が殴られた顔を押さえながら言った。

「ウザイんだよ!カッコつけんな!」

渋谷くんはそう言うと

背を向けて行ってしまった。


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