僕は、君が好きです。
ハァハァ

「しぶやー!!」

俺は正門を

出ようとしていた渋谷を呼び止めた。

「何だよ…。」

振り返った渋谷は

ため息混じりに俺を見た。

「何だよじゃねーよ!

何で帰るんだよっ!」

「真凛が探してたんだぞっ…!」

俺は息を切らしながら

そう言うと渋谷を見た。

「…ぶはぁっっ!!」

渋谷は急にゲラゲラ笑い出した。

何、笑ってんだこいつ…。

「何だよ!?」

渋谷はしばらく笑うと

急にデカイ声で話し出した。

「あーあっっ!

仲原さぁ、お前どんだけお人好しだよ…?

真凛に頼まれたからってさぁ…。

わかってる?真凛は俺の彼女なんだよ?

だから…

お前なんで俺を追いかけてくるわけ?

ない…ないない俺は無理…だわ。」

渋谷はまた笑い出した。

「俺は真凛の困ってる顔を

見たくないんだよ…。

悪いけど俺は真凛が好きだ…。」

そう言って渋谷を真っ直ぐ見た。

「そんなのわかってるよ!

ずっと真凛の事好きだったんだろ?

だからいつも邪魔すんだよな?

マジでキレたわ…さっきのとか…。」

渋谷は俺を冷めた目で見ている。

「お前…ズルいよ。

好きなら正々堂々勝負してこいよ!」

渋谷の言葉に俺は何も返せなかった。

「あのさ…

俺だって真凛が好きなんだよ。

好きなのに…。

傷つけたくないのに。」

渋谷は泣きたくなる様な

切ない顔をしていた。

「お前と真凛が一緒にいる所を見ると

イラついて真凛を傷つけるし。

俺の事好きにさせたいのに…。

逆に嫌われるようなことして…。

あー!こんなはずじゃ

なかったんだけどなー!」

「渋谷…。」

「でも…やっぱり

俺には無理みたいだわ…。」

「え…?」

「仲原はやっぱ…格好いいな…

そりゃ、モテるわ!」

「は?何だよ…それ」

「だから…俺の負けかな。」

「だから…さっきから何なんだよ。」

俺が怪訝な顔で渋谷を見ると

渋谷はフッと、笑った。

「まったく!

お前ら本当にめんどくせー!」

そう言うと渋谷はまた歩き出した。

「あっ!おいっ!何だよ!

真凛の事どーすんだよ。」

俺は渋谷を追いかけて肩を掴んだ。

「わりぃ、今日は勘弁して…

明日ちゃんと話するから。

あっ、それと顔…悪かったな。」

そう言うと俺の手をどけた。

「ホント、わりーよ!」

そう言って渋谷の背中を見送った。

渋谷は…

お前はいつも清々しいくらい真っ直ぐで…。

潔くて…自分に正直だ。

そんなお前を見てると俺は…いつも

劣等感でいっぱいだった。

そして…

自分が恥ずかしくなったんだよ。

お前は、俺なんかよりずっと格好いい。

お前はすごいよ…。
< 72 / 212 >

この作品をシェア

pagetop