僕は、君が好きです。
「泰詩っ…」

廊下を抜けると目の前に音楽室が見えた。

扉を開け中に入ると真凛と二人

顔を見合わせてた。

二人とも"ハァハァハァ"と

少し息を切らせている。

「急に、走ってごめんっ…。」

俺がそう言って真凛の手を離すと

「うん…っ、大丈夫っ…。」

と言って俺の顔を見上げると

また俺の手をギュッと握った。

「…えっ?」

真凛の行動に驚いて真凛を

じっと見つめていると…

「昔みたいに泰詩と手を繋いで走って

すっごく楽しかった!!」

そう言って笑う君。

その屈託ない笑顔に…

俺もつられて笑ってしまう。

「皆、見てたのかな…?」

真凛が一人言のように呟いた。

「…心配?」

俺がそう聞くと真凛は首をゆっくり

横に振って微笑んで言った。

「平気だよ…私、泰詩が

隣にいてくれて嬉しいんだもん。

昔みたい!!…すっごく楽しいよ!」

「昔…みたいか。」

「えっ…?」

「…俺達…さ…」

付き合わない?

そう言おうとして真凛を見ると

真凛は、俺の顔をニコニコして

見上げていた。

「うん、何?」

「いや、早く教室戻らないと

ヤバイな…っ。」

「えっ?

…あ、ホームルーム始まるねっ!」

君が好き…。

俺は周りの奴らに何を言われても

そんなの全然平気だった。

だって昔からずっとそうだったんだ。

ただ、君が隣にいてくれたら

それだけでよかったから。

なのに…今はそれだけじゃ嫌になってる。

こんな事を望むのは駄目だろうか。

君を自分のものにしたいだなんて…。


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