僕は、君が好きです。
それからしばらくして…

夏休みに入る前の日。

朝、駅に着くと改札の所に泰詩がいた。

え?泰詩…

「おはよ」

「おはよう…どうして?」

「真凛を待ってた。」

「待ってたって…何時から?」

私…

いつもよりかなり早く家を出てるのに。

「そんな事より…今度は何だよ。」

「何?」

「何で無視するんだよ。」

「無視なんてしてない…。」

「じゃあ、何?」

ズキ…

胸がチクチクする。

「嘘つくなよ…

俺の事全然見ないし。

話かけても聞こえないフリして

無視してるだろ?。」

「…そんなつもりないよっ。」

私は笑って見せた。

ズキンズキン…胸が痛い。

「嘘だ…。」

泰詩はそう言うと私の腕を掴んだ。

「痛っ…はなして。」

泰詩は私の言葉を無視して

駅の隅の方に引っ張った。

泰詩の顔が私の顔に近づく…。

一気に顔が熱くなる。

「泰詩…」

ドキンドキン…

胸の鼓動が大きくなる。

このままだと

心臓が爆発しちゃう…。

限界…

私は泰詩の顔が見れずに下を向いた。

「真凛…。俺の顔を見て。」

私がゆっくり顔を上げると

泰詩と目が合う。

泰詩の顔…久しぶりに見た。

ずっと見たくて見たくて我慢してた顔。

綺麗に整った二重の目、

意思の強そうな眉、

スッと通った鼻筋、

少し薄い唇…。

男の子なのに…

いつもほんのりピンクで可愛いねって

からかったよね。

前より頬が少し痩けていたけど

私の大好きなその瞳の光は同じだった。

その綺麗な瞳でじっと見つめられると

吸い込まれてしまいそうになって

動けなくなる…。

でもどれも私の大好きな泰詩の顔だった。

手を伸ばしたら触れれる距離…。

私はその顔に触れたいと思った。

「真凛…

俺の気持ちがわからないって

言ってだけど…知りたい?」

泰詩の気持ち?

それって…

泰詩が誰かを好きって話だよね。

「聞きたくない…。」

私は泰詩から顔を反らした。

私にはもう、そんなの関係ない。

だって私…

泰詩の事、考えるのやめたんだから。

「私は…」

"知りたくない"

そう言おうとした

私の言葉を遮るように泰詩が話し出した。
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