君が笑ってくれるなら
『後輩……和泉と居ると楽なんだ。仕事中は気が張っているから、なんか癒やされるんだよな』

「ヘエ~、良かったね。彼女さん!」

和泉は彼女と呼ばれ薄く頬を染めた。

楽屋を出ると、まだロビーには出待ちしているファンが溢れていた。

駐車場まで歩き、結城はメモをサラサラと書き和泉に向けた。

──この後、空いているよな。お腹空いているだろ? 夕飯、予約しているから

結城はドアを開け、キャリーバックを運転席に置いた。

後部座席にストックした酸素ボンベとキャリーバックの中身を入れ替え、後部座席にそっと置くと、和泉が助手席に座ったのを確認しエンジンをかけた。

1日中で酸素ボンベを何回取り替えるんだろう、和泉はふと思う。

結城は信号待ちで、黙りこんでいる和泉にメモを差し出す。

──余計なこと考えてないか? 体調はいいんだ。無理はしていない

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