君が笑ってくれるなら
結城は車のキーを抜き、後部座席からキャリーバックを引き出し、画用紙を入れ「行くぞ」と手で合図した。

数ヶ月先まで予約待ちで有名な店に堂々入っていく。

「結城さん、スゴい! よく此処の予約とれましたね」

和泉は驚き半分、胸踊らせ結城に歩調を合わせる。

店内に入り、結城か受け付けカウンターに立つと、グレーのスーツをパリッと着こなした男性が近づいてきた。

「結城さま、お席へご案内いたします」

『支配人、急な予約で申し訳なかった』

「いえ、他でもない由樹さまの申し入れですから」

『無理をさせたな。ありがとう』

和泉は支配人と結城のやりとりについて口をパクパクさせた。

「こちらへどうぞ」

支配人が案内した席は窓際で市街を一望できる。

支配人は結城と和泉が席に着くと、メニューを手渡し「ごゆっくり」と一礼し、席を外した。
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