君が笑ってくれるなら
目の前に居るのは麻生紗世ではない、結城は自分自身に言い聞かせる。

「はい、嬉しいです」

共通点は美味しそうに食べることくらいしかないのにと思いながら、結城は何故癒やされるのかを考える。

ずっと張りつめている気持ちが、和泉の前では和むのが不思議でならない。

──あの後、大丈夫だったか? いくら気が高ぶったからとはいえ、水ぶっかけるなんて普通しないだろ

「でもスゴく悔しかったんです。結城さんだって、冷静にけっこうグサッとすること言ってましたよ」

──そうだったか? いちゃもんつけられたら言えよ

「はい。結城さんも気をつけてくださいね」

『ありがとう、嬉しかったよ。嬉しかった』

結城はボールペンをテーブルに置き、ゆっくりと手を動かした。

『なあ、また誘ってもいいか』
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