君が笑ってくれるなら
「えーーーっ!? 大丈夫なんですか」

『話し合った結果だ。それに収穫もあった。銀田末シリーズの続編を執筆される』

力無く笑った顔に、どれほど白熱した会話を交わしたのかが窺え「お疲れ様」と、胸の内で呟く。

『良い風だな。仕事に戻るのが惜しいくらいだ』

結城さんは手話で言い、セメントの上に手足を伸ばし寝転がった。

「結城さん!?」

『冷たくて……気持ちいい』

結城さんは寝そべったまま、覗きこむわたしに向かって両手を伸ばした。

「気持ちいいって……汚れちゃいますよ」

わたしは結城さんを起こそうと、結城さんの手を握り「あっ」と息を飲んだ。

『心配するな。解熱剤は飲んだ』

結城さんはあっけらかんとしている。

『こうして小説の場面を思い浮かべると、文章が降りて来るんだ』
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