君が笑ってくれるなら
「いつも此処で文章考えてるんですか」

『降りて来るんだ』

「……面白いことを言いますね」

『そうか? 作家の先生方の作品は良い刺激だし、美味しそうに御飯食べる奴を観るのは癒やしになって、文章が湧いてくるんだ』

ゆっくりと、わたしにも解るように手を動かす。

『手話、わからなかったら言ってくれよ』

「なんとか解ります。わたし、テレビ手話講座観て勉強しているんです」

自慢げに言ってみる。

『西村先生も手話を習い始められたそうだ……有り難いよな。俺は色々な人に助けられている』

綺麗な手の動きに気持ちがこもっているなと思う。

『いつか、ご恩返しをしなきゃな』

結城さんは優しく笑い体を起こして立ち上がり、上着を脱ぎ背中についた汚れをはたいた。

そして上着を羽織り、ポケットからスッとスティックを取り出し、わたしに差し出した。
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