君が笑ってくれるなら
『いえ、沢山先生の「空を詠む」との企画のおかげです』
「おいおい、謙遜か。連載当初から『空と君との間には』は評判になっていたし、評価も高かった」
梅川百冬の原稿を持ち帰った俺に、編集長が上機嫌で話しかけてきた。
「芥良山賞の候補作品になると思っていたが……那由多賞とはな」
「ですよね。沢山先生と競わせようという魂胆見え見えですよね」
パソコンにかじりつき、沢山江梨子の原稿チェックをしていた相田さんが、会話に割り込む。
「そもそも、デビュー作の『限りなくグレーに近い空』は芥良山賞にノミネートされていたのに、由樹は辞退したからな」
そう、俺は芥良山賞を辞退した。
賞自体を受け止められる心境ではなかった。
目の前で黒田さんの交通事故に遭遇し、心神耗弱のまま黒田さんの仕事を一手に任され、オーバーワーク状態だった。
「おいおい、謙遜か。連載当初から『空と君との間には』は評判になっていたし、評価も高かった」
梅川百冬の原稿を持ち帰った俺に、編集長が上機嫌で話しかけてきた。
「芥良山賞の候補作品になると思っていたが……那由多賞とはな」
「ですよね。沢山先生と競わせようという魂胆見え見えですよね」
パソコンにかじりつき、沢山江梨子の原稿チェックをしていた相田さんが、会話に割り込む。
「そもそも、デビュー作の『限りなくグレーに近い空』は芥良山賞にノミネートされていたのに、由樹は辞退したからな」
そう、俺は芥良山賞を辞退した。
賞自体を受け止められる心境ではなかった。
目の前で黒田さんの交通事故に遭遇し、心神耗弱のまま黒田さんの仕事を一手に任され、オーバーワーク状態だった。