君が笑ってくれるなら
『これでも、息抜きをする時間はありますから』

「言うね~。先日、西村先生が感心しておられた。『彼はまるで感情を持ったアンドロイドだ』と」

『アンドロイドですか……何とコメントしていいやら』

席に着き、後輩の作成した書類に目を通す。

細かいチェックを入れながら、見直しはしたのかと疑いたくなる。

隣の席に目をやり、編集長に、机を鳴らし合図して『彼らは?』と手話で訊ねる。

「ああ、外回りに着いて行かせた。もう直、戻るだろう」

『編集長、ありがとうございます。俺、後輩にデスクワーク専門で教えていましたけど、そろそろ外回りもと思っていたんで』

「いきなり大御所相手は、厳しいからな」

『そうですか? 相手が誰であれ、入口は同じですよ』

「お前みたいにはいかんよ」

パソコンを立ち上げ、作業をしながら編集長の溜め息を聞く。

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