君が笑ってくれるなら
仕事から真っ直ぐリハビリを受け、家に戻り倒れるように、体をソファーに沈める。

「由樹、帰って早々だけど帝都医大に行くわよ」

『……何で』

「車の中で話すわ」

俺が驚いて体を起こすと、詩乃が俺を急かした。

車中、詩乃は父が数日前、会議中に心筋梗塞で倒れ、入院していることを伝えた。

昨年の人間ドックの際、用心するよう言われ薬も飲んでいたらしい。

「あなたには心配をかけたくないと、口止めされていたの。でも──」

父も既に60才半ばを過ぎている。

コンツェルンを統括するのに体を酷使していたようだ。

兄2人がコンツェルンの後継とし、経営に携わっている。

一筋縄ではいかない重役たちやグループ企業、下請け企業には、手を妬いていると聞いていた。

詩乃は父が常々「由樹が健康で、補佐をしてくれたら」と零していたとも語った。
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