君が笑ってくれるなら
「由樹、お前を経営に巻き込むまいとしたんだが、父がお前をと利かなくてな」

『お祖父様が……重役と兄さんたちはそんなに深刻な状態なんですか』

「重役たちに派閥があってな、あれ達には荷が重いのだろう。すまんな、父も儂もお前の出版社での仕事ぶりは聞いているが、あれ達ではどうにもならん」

『考える猶予はなしですか』

「今は父が何とか踏ん張っている。儂も来週頭には退院できるそうだが、今までのようには動けない。由樹、補佐を頼む」

『早急に仕事の引き継ぎなど済ませます。お祖父様には退院に合わせ着任するとお伝えください』

祖父が口を挟んでくるほど重役との関係がギクシャクしているなど、経営面にも影響を及ぼしているに違いなかった。

編集の仕事を離れるのは本意ではないが、結城家の1大事だ。

仕事も那由多賞も気になるが、好き勝手を通すことはできないと思った。

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