君が笑ってくれるなら
「由樹、大丈夫?」

俺の元上司、黒田さんが、心配そうな顔をする。

「大丈夫だ」と言おうとして、口を動かすけれど声にならない。

「由樹!?」

黒田さんに心配をかけまいとして、静かに微笑んでみせる。

けれど、何かが違っていた。

喉が塞がってしまったように、言葉を話そう、声を出そうとしても、空気が漏れるばかりで音にならない。

君を失った悲しみが、胸を締めつける。

君を1人で、出先へ行かせたことが悔やまれる。

いつも明るい声で、俺を呼んでいた君の声。

ぷくりと頬を膨らませる仕草。

驚いた時の大きな目も甲高い声も……。

君は、もう目を開かない。

息苦しさを感じて、目眩が起きそうなのを気力で持ちこたえる。

だけど……俺は祈る言葉さえ失っていた。


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