君が笑ってくれるなら
机の引き出しに、しっかり鍵をかけて……。


「和泉さん、あなた結城さんと親しいのかしら?」


帰り仕度をしていると、ハイヒールの音を鳴らして、総務部の大奥取締りと呼ばれている田中奈美子が、話しかけてきた。


「いいえ、結城さんとは今日が初対面でしたけど……優しい方ですね」


「忠告しておくわ。結城由樹は、やめておきなさい。誰にもなびかないわよ。それに、彼にはパトロンがいるわ」


「はあ!? パトロン……」

「単なる庇護者とか援助者とかって間柄ではなくってよ」

頭は大丈夫なのかと思う。

「そうなんですか~」

馬鹿のふりをして、スルーしたほうが無難だなと思う。

大方、結城さんに告ってフラれでもしたんだろうなと思う、お気の毒に……。


「わかったわね」


「は~い」

ニッコリ素直にこたえた私。



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