君が笑ってくれるなら
彼女が室を出ていったのを確認して、ゆっくり更衣室に向かう。

同期の女子会で、結城さんが前の社長秘書と犬猿の仲だったという話は聞いた。

その流れから、結城さんの後ろ楯には財界の大物がいるという話になったことがある。

だからといって、さっきの話は取って付けたような話だ。

更衣室。ロッカーを開け、置き傘が無いのに気付く。

持って帰ったかなと思い、着替えを済ませる。

会社ビルのロビーに降りると、窓ガラスの扉越しに見えたのは、土砂降りの雨。

付いてないなと思い、会社ビルを出て駅まで走ることにする。

走り始めて直ぐに、びしょ濡れ。
真夏ではなくてよかったと思う。

雨宿り場所を探しながら走っていると、スピードを落として横付けするダークシェリー色のセダン車からクラクション音が鳴る。

カーウィンドウがスーッと開き、再びクラクション。


「結城さん!?」
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