君が笑ってくれるなら
1章/24才、イケメン作家
胸の鼓動が半端なかった。

エレベーターの中。
目の覚めるようなイケメンと2人っきり。

社内随一のイケメンと噂される結城由樹。

彼を初めて見た時、私はまだ大学生だった。

都内の本屋でバイトをしていた。

スーツ姿で、くるんと大きな目をした小柄な女子を連れ、店内を闊歩するさまに釘づけだった。

「円山夏樹出版社の結城さんよ」

「女流作家『沢山江利子』と、人気を競ってる新進作家『万萬詩悠』って彼なのよね」

何て話をカウンターでしていた。

そこに彼は、週刊誌1冊、ミステリー1冊、純文学1冊、その他2冊の計5冊を纏めて、カウンターに置いた。

「カバーも袋もいらないから」

掠れ気味の細い声で、マネーリーダーにスマホを当てる。

その仕草に、じっと見惚れていた。

「あの和泉京香さん、レジ並んでるけど」


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