君が笑ってくれるなら
6章/今でも……愛している
「スープの味がもの足らない……見つからない凶器が鋭利な……あっ!? 結城くん」


――気づかれましたか?



「鍋の中に入れてしまえば何も残らない……か」


――ええ、溶けてしまいますね


「うっ、飲みたくないスープだな」


――トマトスープが嫌いになりそうですよ

俺は大袈裟に、顔をしかめ手振りまでつけて見せる。


「結城くん、ミステリーを書いてみないかね!?」


――先生の作品で腹いっぱいですよ。それにトリックを考えてたら、眠剤の量が増えそうです


西村がハッとした顔を向けてくる。


「眠れないのかね?」


――ええ、快眠にはほど遠いですよ


「難儀だな。儂が夜通し可愛がって寝かせてやってもいいんだが」

ニマリ、鼻の下を伸ばして西村が言う。

俺の体を足先から頭まで、舐めるようにみつめて。


――遠慮します

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