君が笑ってくれるなら
結城さんから、微かにグリーンノートの爽やかな香りがする。
エレベーターを降りて、早く仕事に戻らなきゃと気持ちが焦る。
結城さんの手が、わたしの手にそっと触れる。
ハッとして振り返ると、結城さんの口がゆっくりと動いた。
『少し歩を緩めてくれないか……息が切れる』
結城さんの忙しく動く肩、辛そうな息遣い。
本当に体が弱いんだって思う。
廊下をすれ違う社員が、わたし達をちらちらと振り返っていく。
結城さんと肩を並べて、総務部に入ると、ブランド物とはっきりわかる真っ赤なメガネをかけたストレートヘアの女性が、つかつかとヒールを鳴らして歩み寄ってきた。
「遅いご帰還ですこと」
総務部のお局様、田中奈美子だ。
メガネの縁を数本の指で上げキッと、こちらを睨む。
わたしの後ろに結城さんがいるのを確認すると、急に顔を緩めた。
エレベーターを降りて、早く仕事に戻らなきゃと気持ちが焦る。
結城さんの手が、わたしの手にそっと触れる。
ハッとして振り返ると、結城さんの口がゆっくりと動いた。
『少し歩を緩めてくれないか……息が切れる』
結城さんの忙しく動く肩、辛そうな息遣い。
本当に体が弱いんだって思う。
廊下をすれ違う社員が、わたし達をちらちらと振り返っていく。
結城さんと肩を並べて、総務部に入ると、ブランド物とはっきりわかる真っ赤なメガネをかけたストレートヘアの女性が、つかつかとヒールを鳴らして歩み寄ってきた。
「遅いご帰還ですこと」
総務部のお局様、田中奈美子だ。
メガネの縁を数本の指で上げキッと、こちらを睨む。
わたしの後ろに結城さんがいるのを確認すると、急に顔を緩めた。